「自分のサイト、ユーザーがどこを見ているかまったくわからない……」
「クリックされているボタンが本当に効果的か知りたい!」
「アクセス数は増えたけど、どこで離脱しているのか把握できない……」
「高価な解析ツールは手が出せないけれど、サイト改善に役立つヒートマップを使ってみたい!」
そんなWeb担当者やサイト運営者の声に応えるのが、Microsoftが無料で提供するヒートマップツール『Clarity』です。
本記事では、
- Clarityの導入方法
- 初期設定のポイント
- 使いこなしのコツ
を初心者の方にもわかりやすくステップバイステップで解説します。
まずは不安や疑問をすべてクリアにして、すぐにデータに基づく改善サイクルを始めましょう!
Microsoft Clarityとはどんなツールか
無料で始められるサイト解析プラットフォーム
Clarityは、完全無料で利用できるウェブ解析ツールです。
- 🎉 初期費用・月額費用ゼロ
- インストール直後からすぐにデータを収集・確認できます
セッション数・プロジェクト数に上限なし
Clarityの大きな魅力は、解析対象のサイト数やセッション数に制限がないことです。
- 🔄 無制限のデータ取得
- 大規模サイトでも心配なく利用可能
提供元とライセンス形態
Microsoft社公式の無償サービス
ClarityはMicrosoft社が開発・提供しているため、安心のサポート体制と継続的なアップデートが期待できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供会社 | Microsoft |
| 利用料金 | 無料(商用利用OK) |
| サポート | オンラインドキュメント中心 |
| データ保有期間 | 無制限 |
主な機能と可視化手法
ダッシュボードで見るサイト全体の状況
Clarityのダッシュボードは、サイト訪問の全体像を一目で把握できる画面です。
- 📊 リアルタイム訪問数:現在サイトを訪れているユーザー数が分かる
- 📈 人気ページランキング:PV数や平均滞在時間で上位ページを自動集計
- ⏱️ セッション傾向:時間帯ごとのアクセス波をグラフ化
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| アクティブユーザー | 現在閲覧中のユーザー数 |
| ページビュー | 日ごとの合計PV |
| 平均滞在時間 | 1セッションあたりの平均滞在時間 |
行動を“見る”機能
レコーディング再生(ユーザー操作を動画で確認)
- 🎥 ユーザーがクリック・スクロールした流れを動画形式で再生
- セッション単位でフィルタリング可能(例:新規ユーザーのみ)
- 注目ポイント:離脱直前の操作やフォーム入力の過程を詳細チェック
ヒートマップ表示
ヒートマップは、ユーザー行動を色の濃淡で可視化します。
下表のような種類があり、それぞれ異なるインサイトを得られます。
| 種類 | 表示内容 | 主な活用例 |
|---|---|---|
| クリックマップ | 各要素が何回クリックされたかを色分け | ボタンやリンクの効果測定 |
| スクロールマップ | ページのどこまでスクロールされたか | コンテンツの配置最適化 |
| エリアマップ | 滞在時間や視線集中度を可視化 | 重要コンテンツの注目度チェック |
クリックマップ(Dead/Rageクリック含む)
- 🔥 Deadクリック:効果がない箇所が誤ってクリックされた回数
- 😡 Rageクリック:ストレスを感じたユーザーが連打した回数
スクロールマップ
- ページ上部から下部までの到達率をグラフで表示
- どのポイントで離脱が多いか視覚的に把握
エリアマップ(Attentionマップなど)
- 注視領域を色の強弱で表現(Attentionマップ)
- ユーザーの視線が集まりやすいコンテンツ配置を検証
他ツールとの連携
Google アナリティクスとのデータ連携
- 🔗 Clarity上で取得した行動データをGAに自動送信可能
- GAのセグメントと組み合わせて、より深い分析が実現
- メリット:定量データ(GA)と定性データ(Clarity)を横断的に活用

導入ステップと初期設定
アカウント登録からプロジェクト作成まで
Microsoftアカウントでサインアップ
- Microsoft公式サイトにアクセスし、新規登録ページへ移動
- お手持ちのメールアドレスでアカウントを作成(所要時間は約1~2分)
- メール認証を完了するとダッシュボードへログイン可能
ポイント:既にMicrosoftアカウントをお持ちの場合は、そのままサインインできます ✅
新規サイト登録手順
- ダッシュボード左上の「+新しいプロジェクト」をクリック
- サイト名・URLを入力し、「作成」ボタンを押下
- プロジェクトが一覧に追加されたら、レビュー画面へ遷移
Tip:プロジェクト名は後から変更できるので、まずはサイトのURLを正確に入力しましょう ✍️
トラッキングコードの埋め込み方法
HTMLソースに直接貼り付ける方法
- 発行されたスクリプトタグをコピー
- サイト全ページの
<head>タグ直後にペースト - 保存&デプロイ後、ダッシュボードで「データ受信中」になることを確認
Googleタグマネージャー経由で導入する方法
- GTMの管理画面で「新しいタグ」を作成
- タグタイプに「カスタムHTML」を選択し、Clarityのスクリプトを貼り付け
- トリガーを「All Pages」に設定して公開
| 方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 直接貼り付け | 即時反映、コードがシンプル | ソース管理が煩雑になる可能性あり |
| Googleタグマネージャー経由 | タグ一元管理で運用しやすい | GTMの操作に慣れている必要がある |

追加設定とオプション
内部アクセスの除外設定
- 社内IPアドレスや特定ユーザーのアクセスを計測対象外に
- ダッシュボードの「設定>フィルター」からIPレンジを登録
- 効果:ノイズとなる社内アクセスをカットし、正確なデータを取得 🎯
マスキング(個人情報保護)の有効化
- フォーム入力欄やURLパラメーター内の個人情報を自動隠蔽
- 「設定>プライバシー」からマスキングをオンに切り替え
- 安心ポイント:GDPRや個人情報保護法にも配慮したデータ収集が可能 🔒
Clarityを活用した改善フロー
データ収集から施策実行までの流れ
- データ収集
- Clarityのダッシュボードやヒートマップ・レコーディングでユーザー行動を取得
- 📥 リアルタイム&履歴データをまとめて収集
- インサイト抽出
- ヒートマップで「クリック集中箇所」や「スクロール到達率」を確認
- 🎯 離脱が多いエリアや人気の高いセクションを特定
- 仮説設定
- 抽出したデータをもとに「なぜ離脱しているか」「どこを改善すべきか」を検討
- ✍️ 具体的な改善案(ボタン色変更/テキスト追加など)をリストアップ
- 施策実行
- A/Bテストやデザイン改修で仮説を検証
- 🚀 改善内容をステージング環境で実装・公開
- 結果測定とフィードバック
- 再度Clarityで行動データを確認し、効果測定
- ✅ 成果が出た施策を本番環境へ反映し、未達項目は再度仮説立案
具体的な改善事例
離脱ポイントを把握してCTA配置を見直す
- 課題:ページ中央でユーザーの離脱が50%以上発生
- 対応:
- スクロールマップで離脱エリアを特定
- 離脱直前にCTAボタンを再配置
- ボタンを目立つ色に変更し、文言も具体的に改善
- 成果:クリック率が💡20%向上
| before | after |
|---|---|
| 離脱率:50% | 離脱率:30% |
| CTAクリック率:4% | CTAクリック率:24% |
人気コンテンツの視認性向上によるPV増加
- 課題:下部コンテンツが読まれず、PVが伸び悩み
- 対応:
- ヒートマップで高注目エリアを確認
- 人気記事リンクをページ上部にスライド導入
- アイキャッチ画像を追加して視線誘導を強化
- 成果:該当コンテンツのPVが📈35%増加
| before | after |
|---|---|
| 人気記事PV/月:1,000 | 人気記事PV/月:1,350 |
| 平均滞在時間:45秒 | 平均滞在時間:1分10秒 |
他社製ツールとの比較ポイント
無料版Clarity vs 有料ヒートマップツール
機能網羅性の違い(詳細ヒートマップやレコーディング精度)
Clarityは基本的なヒートマップ(クリック・スクロール・エリア)とレコーディング機能を備えていますが、有料ツールではさらに高度なフィルタリングやカスタム指標が利用可能です。
- Clarity:標準的なヒートマップ+録画再生
- 有料ツール:A/Bテスト連携、ヒートマップ比較、詳細セグメント
| 機能 | Clarity(無料) | 有料ツール例 |
|---|---|---|
| カスタムマップ | ✕ | ✅ |
| ヒートマップ比較機能 | ✕ | ✅ |
| 高精度レコーディング(FPS) | 基本的 | 高fps対応 |
| AI・自動解析 | ✕ | ✅ |
コンバージョン計測・セグメント機能の優劣
- Clarity:シンプルなセッションフィルター(新規/リピーターなど)はあるものの、細かなコンバージョン計測やユーザー属性ごとの分析は限定的
- 有料ツール:目標到達率のトラッキングや、ユーザーグループ別の行動比較が容易に設定可能 🎯
サポート体制とドキュメント充実度
- Clarity:オンラインドキュメント中心。コミュニティフォーラムでのQAが主流
- 有料ツール:専任サポート、導入コンサルティング、定期アップデート通知など手厚いサポート体制 💁♀️
| 項目 | Clarity | 有料ツール |
|---|---|---|
| サポート形式 | ドキュメント/フォーラム | 電話・メール・チャット |
| 導入支援 | ✕ | ✅ |
| トレーニング | ✕ | ✅ |
GA4との役割分担
- GA4(定量分析)
- ビジネスゴールに対するKPI測定
- トラフィックソース、ユーザー属性、コンバージョン率
- Clarity(定性分析)
- ユーザーの操作行動を可視化
- ページ上の問題点や視線誘導の把握
両者を組み合わせることで、数値の裏側にあるユーザー心理まで深掘りできるのが理想的な運用方法です✨
運用上の注意点とベストプラクティス
モバイル分析のポイント
- 画面サイズの違いを必ず考慮する
- 小型端末ではスクロール到達率が短くなる傾向あり
- タッチ操作特性を把握する
- 指でのタップ位置ズレ(“ミスタップ”)が発生しやすい
- Rageクリックやデッドクリックの原因分析に活用
- レスポンシブ対応の確認
- PC/スマホでレイアウト崩れがないか、ヒートマップ上で比較
- モバイル限定セグメントを設定する
- ユーザーエージェントでフィルターし、端末別動向を分けて見る 📱
サンプルサイズと統計的信頼性
- 十分なセッション数を確保する
- 一般的には最低でも数千セッションが理想
- 期間の設定に注意
- 短期間すぎると季節・曜日バイアスが強まる
- 統計的有意差を意識する
- 数値の差が偶然でないか検証(A/Bテストなどで裏付けを取る)
- 極端な数値に警戒
- クリック数が少ない要素は誤差が大きくなりやすい ⚠️
| 指標 | 推奨セッション数 | 注意点 |
|---|---|---|
| クリックマップ | ≥3,000 | 母数が少ないとクリック分布が偏る |
| スクロールマップ | ≥5,000 | 深いスクロールはサンプル不足に注意 |
| レコーディング | ≥100セッション | 再現性を持たせるために複数対象推奨 |
データ解釈時の落とし穴
- 因果関係と相関関係の混同
- クリックが少ない → 必ずしも問題箇所とは限らない
- 一面だけ切り取らない
- ヒートマップ結果だけで全体最適を判断しない
- 単一ユーザーの過度な影響
- 一人の長時間セッションがヒートマップに強く反映される場合あり
- テンプレートバイアス
- 他サイトの成功事例をそのまま流用しない
- 過剰なカスタマイズに注意
- あれこれ設定変更しすぎると比較困難に 😵💫
以上を踏まえ、Clarity運用ではデータの質と背景を常に意識しつつ、複数手法で裏付けを取りながらPDCAサイクルを回すのがベストプラクティスです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 無料版の利用制限は?
Clarityは完全無料で提供されており、サイト数やページビューに上限はありません。
- 🎉 アカウント登録数:無制限
- 📊 セッション数:無制限
- 🗂️ プロジェクト数:無制限
- 注意点:高トラフィックサイトではデータ処理に数分のラグが発生する場合があります
Q2. GDPR/プライバシー対応はどうなっている?
Clarityは個人情報保護に配慮した設計となっています。
- 🔒 IPアドレス匿名化:ユーザーのIPをマスクし、特定不可
- 🔐 マスキング機能:フォーム入力欄やURLパラメーターの機密情報を自動隠蔽
- ✅ ユーザー同意管理:Cookie同意バナーとの連携が可能
- Tip:必要に応じて自社のプライバシーポリシーにClarity利用を明記しましょう
Q3. データ保存期間と削除手順は?
Clarityではデフォルトでデータ保有期間に制限がありません。
| 設定項目 | 説明 |
|---|---|
| データ保管期間 | 無期限(自動削除設定はなし) |
| 手動削除 | ダッシュボードからプロジェクト単位で削除可能 |
| エクスポート | CSV形式でヒートマップデータをダウンロード可能 |
- ダッシュボード左メニューの「設定」を開く
- 削除したいプロジェクトを選択
- 「プロジェクトを削除」ボタンをクリック
- 確認ダイアログで「はい」を選ぶと完全消去されます ✅
まとめ
本記事では、Microsoft Clarityを使ったヒートマップ解析の始め方を以下の流れでご紹介しました:
- アカウント登録からプロジェクト作成までの手順
- トラッキングコードの設置方法(直接貼り付け/GTM経由)
- ダッシュボードやヒートマップの基本操作
- 収集データを活かした改善フロー
Clarityは完全無料ながら、無制限のセッション計測と豊富な可視化機能を備えています。
「ユーザーの行動を“見える化”」することで、課題発見から施策検証までのPDCAを高速に回せるのが最大のメリットです。
ぜひ今回のガイドを参考に、Clarityを導入して実践的なサイト改善をスタートしましょう!

